ぶどう|収穫時期:6月〜11月
江戸時代初期から続く
「ぶどう」栽培の歴史
日当たりが良く、
昼夜の寒暖の差が大きい栽培適地
夏から秋、国道13号線の高畠町や南陽市周辺を車で走ると、見慣れない光景に出会う。なだらかな丘陵地が幾何学的な模様を作り、柔らかい日ざしに銀色に輝いている。よく見ると、ぶどう畑だ。アーチ型のビニールハウスが連綿とつながり、まさに一大ぶどう団地だ。
山形県のぶどう栽培の歴史はかなり古い。南陽市鳥上坂のぶどうの碑には、「ここは江戸時代初期にぶどう栽培が始まった、山形県ぶどう発祥の地。地区内の大洞鉱山が隆盛していた頃、甲州(現、山梨県)の鉱夫が甲州ぶどうを持ち込んだ説、また出羽三山に通じるこの街道を通って、修験者がぶどうを持ち込んだ説の二つが伝えられている」とある。いずれにせよ甲州と現在の南陽市周辺の地帯に、昔人は共通する風土を見いだしたに違いない。その結果、江戸の後期にはすでに、このあたり一帯で甲州ぶどうが作られていた。
明治になって欧州種や米国種の「デラウェア」などが入ると、いよいよ産地として盛んになる。大正初期には、米より高い値が付き、ぶどう景気に沸いたという。現在、山形県はぶどう生産量が全国3位で、特にデラウェアは日本一の産地となっている。
ぶどうはやせた水はけの良い土地を好む。日照が十分あり、昼夜の寒暖の差が大きく、成熟期に雨が少ないなどの条件も、県内のぶどう産地は満たしており、山梨の勝沼地方ともよく比較される。8〜9月の夜風の冷たさは、ぶどうの成熟度と甘みを助けるという。
摘粒ほか、栽培の
スキルアップでさらに品質高く
主な品種は、ぶどうの王様といわれる「巨峰」をはじめ、「高尾」、「ピオーネ」、「安芸クィーン」、「デラウェア」など。
収穫期のぶどう棚をのぞくと、たわわに実った房がそこらじゅうにぶら下がる、みごとな光景に出会える。「軸もとが隠れるぐらいに粒がついているのが、房の理想形」と生産者。形の良い房に仕上げるために、脱粒しないように気遣いながら、細やかな摘粒の手間もかける。こうして年々積み上げてきたスキルの高さが、県産ぶどうの地位を支えているのだ。
そして、導入を推進している注目品種が「シャインマスカット」。緑黄色の甘みが強い大粒タイプで、食べるとマスカットの香りがする。山形では9月中下旬の成熟となり、現在は長期貯蔵出荷の研究が重ねられている。
ぶどうづくりは収穫直後の枝の整理から始まるが、積雪に弱いため、肥料やりなどの準備は雪の前にすませる。翌年の5〜6月に新芽が出たら、いい芽だけを残して枝ぶりを決め、摘粒、袋かけ、水やり、防鳥対策と暑い中での作業が続く。こうした手間に加え、夏の昼間の気温が高く、夜が涼しく、寒暖の差が大きい好条件のもと、おいしく実ったぶどうは収穫期を迎える。
ところで、ぶどうの表面の白い粉は果粉といい(ブルームともいう)、雨をはじくためのもの。多くついているほど新鮮で、とれたての証拠だ。
密生すると陽が当たらなくなるので、棚では枝の張りめぐらせ方がポイント。「高尾」
美しい淡緑色でマスカットの香りがする。糖度20度前後と甘く、日持ちも良い。皮ごと食べられる。「シャインマスカット」
* DATA *
主な産地
高畠町・上山市・南陽市・山形市・天童市・川西町・鶴岡市・ほか